団地ライフラボによる子ども食堂「ちゃべり場」の現在地

2023.11.30 NPO法人団地ライフラボ@茶山台ひきこもりまちづくり子ども・わかもの泉北ニュータウンの孤立と地域をつなぐ助成事業見えない孤立

前回は「茶山台団地を日本一多様な幸せを実現できる場所にしたい!」と語っておられた、団地ライフラボの子ども食堂的な新しい取り組み「ちゃべり場」の現場におじゃましました。

子ども食堂「ちゃべり場」の様子

11月某日夕方。茶山台団地の子ども会の会長である、リーダーのいけちゃんの仕事が押しているとのことで、ちゃべり場会場の一室は中学生3人がシチューの準備をしているところからはじまりました。

慣れない手つきでにんじんやじゃがいもを切ったりしますが、大人は必要以上に指示しません。危ないと感じたときだけアドバイス。

シチューのパッケージ裏の工程を見ながら、やんややんやと言いながら調理を進めます。中学生は全員スマホユーザー。どうしてもわからないときは検索で調べます。じゃがいもの切り方に苦戦している様子。

途中、寝癖だらけの同級生も参加。なんとかシチューが完成し、同時にいけちゃんも到着。

当日の参加者は、子どもと大人をあわせて総勢6名。シチューを食べながらやんやとしゃべっているのが楽しそうでした。

参加した中学生たちの一言コメント

参加したきっかけはメンバーに誘われたから。

これまでおいしかったのは手巻き寿司。みんなでつくるのが楽しい!

夜遅い時間に出歩くのはドキドキする。サーモンがおいしかった。

主催者のいけちゃんこと池田さんが最初に驚いたこと

2023年6月に「ちゃべり場」がスタート。来たいときに来て、帰りたい時に帰ってよし。まかないご飯を食べにくるだけでも、宿題や勉強をしにくるだけでもオーケー。ただしゃべりに来るだけでもオーケー。それがちゃべり場であり、基本的には7棟集会場で開催しているそうです。

池田さん「だいぶ打ち解けてはいます。半年前の初めの頃はもう、完全にお客さん感があったんで」

常連メンバーのうちふたりは元々知り合い。池田さんが会長をつとめる子ども会でリーダーとして関わっていた中学生で、それ以外のメンバーははじめて出会ったのだとか。

池田さん「初回のちゃべり場で衝撃を受けました。団地ライフラボのメンバーにも共有したんですけど、僕らは学校や家でもない、第3の居場所が必要だと思ってこういう場をつくっているんですけど、彼らはすでにスマホというネット上の第3の居場所を持っているんだなと。最初スマホを触ってばかりいたので。第3の居場所ってすごい意義のあることやなと思ってたんですけど、彼らがスマホを触っている様子を見た時に正直困っていないのではないかと思いました」

料理をつくることはスマホを置くための工夫

しかし現実は家庭環境に困難のある中学生たち。スマホから目が話せない様子を見て、池田さんたちはひとつ工夫をしたようです。

「まかないを大人がつくるのをやめて、中学生が料理に参加するように工夫してみました。工夫と言っても単純ですが、2回目に水で戻すだけのうどんを中学生たちが自分でつくってみるようにしたんです。そうすると一旦スマホを横に置かなくてはいけないので。」

会話をするために工夫したことはもうひとつ。

池田さん「カードゲームをやりました。お題に答えていくものです。そのときたまたま今日いるメンバーとひとつ下の中学一年生たちも来ていたんですが、中学二年生の世代と答えがぜんぜん違ったんです。カードゲームに少し酷な質問が混ざっていたのですが、『1番好きな家族は?』というお題なんですけど、中一はすぐお母さんと即答する感じだったのですが、中二はそうはならないわけで。「家族全員殺したい」と本気で答える子どももいました。びっくりしました」

中二の強固なコミュニティと中一のコミュニティが混ざっていかないことも興味深かったと池田さんは付け足します。

ちゃべり場を、わくわくできる場所にしたい

現在の池田さんの悩みは、次の世代が参加していないこと。

池田さん「いま常連の彼らが今度中三なんで、次の世代がなかなか来てない。まあ年齢で対象を決めているわけではないので、高校生でも大学生でも、何かしんどさを抱えている人に来てもらいたいと思っています」

ちゃべり場のチラシ

ちゃべり場のチラシ

池田さん「自分があれぐらいの年齢の時に夜に出歩ける場所って塾と習い事ぐらいしかなかったんですが、でもここやったら親御さんも『行っておいで』と言ってくれるような場所になればと思います」

子ども会で夜回りをすることも、自分の中では同じ理由だと池田さんは語ります。

池田さん「僕の原体験なんですけど、年末に集会場に集められて、夜回りに行って帰ってきたら、おっちゃんが集会場の中で酔っぱらっていたり、あまり食べたことがないおつまみをもらえたり、なんか、大人っぽいことをしてるという体験が面白かったし、いろいろな世代の人と知り合える環境があれば面白いなと思うんです。」

池田さんたちは今のところ自腹で活動しているといいます。

池田さん「そのあたりはどうしようかなと思っていて、今は請求してないです。中学生になれば半分大人で半分子ども。『大人になりなさい』と自立を促されたり、ちょっと突き放されたりしますね。それと子どもさん自身の思春期の誰からも干渉されたくない気持ちがぶつかって、結構つまずく。1番手を差し伸べられにくい時期をなんとかうまくサポートできればと思います。」