地域の人が支え合う循環をつくるため、ある部門を強化する。これからの泉北BASEをさらに好転させる道筋とは?

2024.03.07 ひきこもりまちづくり子ども・わかもの泉北ニュータウンの孤立と地域をつなぐ助成事業特定非営利活動法人 志塾フリースクールラシーナ見えない孤立

子ども食堂と学習サポートを提供する泉北BASEの近況を田重田勝一郎(たじゅうた・しょういちろう)さんから聞きました。

ーーー半年運営して何名くらいの参加がありましたか?

登録者が30人います。月・火・土の週3回で毎日10〜15人いますので、120人ぐらい、6ヶ月かけると延べ人数720人ぐらいですかね。

ーーー実施してうまくいったことはありますか?

一番うまくいったことは自分たちの事業の中ではボランティアさんの巻き込みが一番うまくいったことかもしれないです。大雑把にわけると、

・高校生
・大学生、専門学生
・主婦

に来てもらっています。

高校生は前回のインタビューに登場してもらったこじまっちがわかりやすい例ですね。彼は優秀で、あれからカフェバイトに昇格しました。はじめてのアルバイトなんだそうです。

大学生はもちろん教育系の学生が多いですが、社会学部や経済学部の学生さんもいますね。

ーーー教育系以外の学生さんたちはどんなモチベーションで来られているんですか?

話を聞いていると「自分に何が向いているかわからない」という自分探しの目的がモチベーションになっているようです。

ーーー泉北BASEのある城山台周辺の地域の変化などはありますか?

前回チラッとお話させていただいた主婦の人が善意で活動の拠点をこちらにうつしてくれたことで、ご自身の息子さんや娘さんのお友だちの家族の方などが出入りするようになって、彼らが今、宿題カフェのボランティアをしてくれていて良い循環が生まれていますね。

ーーー良い循環ですね。いま泉北BASEを運営する上での課題はどんなことですか?

ひとつは親御さんとのつながりがあまりないことです。ぜんぜんないわけではないですけどムラがあります。親の顔がぜんぜん見えない子どもたちは一定数います。本当は保護者も巻き込みたいですし、地域の人で宿題カフェを運営してほしい思いがあります。ボランティア募集サイトを見てボランティアに来られる方たちは結構遠いところから来られる方が多く、この地域は少ないんです。

なんというか、困っている人ほど遠慮されるんですね。フードパントリーもしているので「食べ物を持ってかえってくださいね」と伝えているんですが、自分の中でルールを決めておられるのか「週一回しかもらいにきいひんねん」と言われることがあって、その会話の押し問答をすることが稀にあります。

もうひとつの課題としては中学生にもう少しきてほしいですね。小学生が多く、お菓子を食べて騒いで遊んでいる子が多いので中学生は入りにくいだろうなあ、というところが課題です。

ーーー当初の目的は何でしたか?

もともとはある学校の先生にお願いされたことがきっかけです。夜に居場所がない子が多いので、その状況を改善したい、ということなのですが、その目的が達成できていないですね。

ーーー居場所を運営してやってよかったと感じるエピソードを教えてください。

地域とのつながりができました。子ども食堂に登録したお母さんが来月からスタッフで入ってくれます。店長のアンジーさんがスカウトしてくれました。

もともと給食の調理員だった方なのでカフェにとってすごい戦力になります。この地域のスタッフの方は三人目になります。売上をあげるために営業時間を増やしたり、カフェの強化が急務となりました。

ちなみにこの地域のスタッフ一人目の方もカフェスタッフです。二人目の方は高校の事務経験がある方で、事務スタッフをしてもらっています。

ーーー子どもを地域で見守ることの必要性は、振り返ってみて、どういった点で必要でしょうか?

地域で見守っていかないと循環していかないですよね。僕らが見守るのは、もちろん良いことだと思いますが、地域の人が見守っていかないと、その子たちが大人になった時にまた地域に帰ってきて次の子どもたちを見守るという循環が起きないじゃないですか。

地域の子どもは地域で育てるのは、やっぱり筋だと思うので。

ーーー最初にイメージされていた場所になりつつあるんじゃないでしょうか?

子どもの溜まり場をつくるコンセプトで、まさにたまり場にはなってます。 オープン当初に来ていた子どもの数はすごい数なんですけど、今はどっちかというと、延べ人数が多い感じなんですよね。限られた子が毎日のように来ています。

ーーー毎日来るのはお金かかるんじゃないですか?

お金を使わずに来る子の方が多いです。別に駄菓子買わなくても、フリースペースは無料やし。子ども食堂も無料です。

だから、僕らに落ちるお金はどんどん減っているけど、来る子どもたちは増えています。だからカフェの方で大人の利用促進が必要です。

ーーーカフェの方の利用促進でうまくいっていることはありますか?

まだ試行錯誤中ですがフリーペーパーをつくって、2023年12月ごろから配布しています。初回が500部で、全部手配りでポスティングしました。駅に近い側に住む人たちは普段こちら側に来る機会が少ないと思うので、フリーペーパーを見て来てくださった方が何人かいます。今のところスタッフが帰りに歩きながら配布してくれています。

ーーー自分たちだけの取り組みだけでなく、実行会議という支援者の方も入った会議がありました。行ってみて、得られた成果や課題を教えてください。

行政職員や社会福祉協議会の職員の方と課題共有できたのが一番大きな成果です。子育て支援などの部署の方がもっているケースをつなぐ状況が何件かすでに起きています。

具体的には海外から移住されてきた親子のケースですと、日本語の話せないお父さんと日本語の話せるお子さんが子ども食堂に来てくれていて、お父さんはボランティアしてくれています。イスラム圏から来た兄弟も来てくれて、日本語が話せるけれど食べ物に関しては今ハラルフード対策を試行錯誤しながら取り組んでいます。

ーーー最後に2024年度の抱負を教えてください。

もう少し学習会部分をまともな状態にしたいです。学習サポート自体は、めっちゃ頑張ってくれてるんですよ。けれども、小学校低学年が多いのでどうしても勉強よりも遊びがメインになってしまうというところに課題を感じています。

その代わり、良い変化も感じていて、学習会とは関係はないけれど、低学年の子どもたちも食事のあとの片付けや皿洗いなどみんなやるようになりました。聞けば家でやっている子はまったくいないけれど、ここではやる。みんながやるからそれが当たり前になっているのが低学年から経験できているのは良いことだと思っています。

塾代わりとまでは言わないけども、やっぱり塾に行っている子と行ってない子は明確に差がつくので、僕らも今まで学習支援の授業ずっとやってきて、子どもの貧困の問題と学力の関係は、明確に相関関係があるのはわかっているんですよ。

いろんな調査結果からもわかってるので、そういう子たちに、きちんと学力をつける、学習習慣をつける、基礎学力を向上させることを達成できるような運営をしていきたいです。